【前編】なぜ今、モータースポーツに 世界のトップ企業が続々と参入するのか? 観客の変化とマーケティング価値
こんにちは。ぴあ朝日ネクストスコープ株式会社で主に商品開発やユーザー分析を担当している浅野です。
「PIA Segments」にて、新しく「ワールドクラス モータースポーツ」 セグメントをリリースしました。
本セグメントは、世界選手権クラスのレースから国内トップカテゴリーのフォーミュラ・GTレースなどの観戦券、自動車メーカーによるファン感謝イベントなどのチケットを購入、または購入意向の高いオーディエンスを対象としています。
2026年のF1日本GPでは3日間で31.5万人という過去最高レベルの動員を記録。タイパや効率が叫ばれる時代に、なぜわざわざ「現場」へと人々が向かうのか。
本記事(前編)では、この特異な熱狂の背景にあるトレンドと、協参企業(スポンサー)の変遷から見える観客層の変化を紐解きます。
モータースポーツ人気の「再燃」とファン層の地殻変動

かつての「一部の車好きによる限定的な趣味」という枠を超え、いまやモータースポーツは巨大なライフスタイル・コンテンツへと変貌を遂げています。
そこには構造変化がありました。
① Netflixが火をつけた若年層・女性ファンの増加
火付け役となったのはNetflixのドキュメンタリー『Formula 1: 栄光のグランプリ』です。
チーム間の対立やドライバーの苦悩といった「泥臭い人間ドラマ」としてレースを描き出したことで、ルールを知らない新規層(若年層や女性層)に「推し」を作るというムーブメントを生み出しました。
この文化的広がりもあり、世界的な高級ブランドがこぞってモータースポーツに参入しています。
2025年からは、ファッション・時計・最高級酒類などあらゆるラグジュアリー領域を網羅するLVMHグループがF1と10年間のグローバルパートナーシップを締結。
さらに2027年シーズンからは、グッチ(Gucci)がF1史上初となるファッションブランドとしてのタイトルパートナー(メインスポンサー)就任を発表するなど、サーキットは今や世界でエレガントな社交場へと進化しています。
② 国内レジャーの多様化と、歴史的動員「31.5万人」が示す熱狂
国内においても、世界で戦う日本人選手の躍進だけでなく、サーキットを「キャンプを楽しみながら生の衝撃を味わうフィールド」として楽しむアウトドア層や、スマホを閉じて五感を解放する「アテンション・デトックス」を求める層が増えています。
さらに、2026年からはフジテレビによるF1地上波放送の復活(5年間の独占契約)で「お茶の間」への回帰が実現したほか、TOYOTA GAZOO Racingのタイトルパートナー就任による新たなF1参戦体制、そしてホンダ(HRC)のアストンマーティンを通じたワークス体制での完全復活など、一般層やビジネス層を巻き込んだ熱狂の土壌が整いました。
スポンサーの変遷が映し出す、モータースポーツ空間の洗練

モータースポーツのスポンサーの顔ぶれも変化してきました。タバコメーカーのスポンサードの時代、その後のIT・通信・金融業、エナジードリンク、そしてオラクルに代表される『クラウド・データ解析などのテクノロジーパートナー』、さらにはルイ・ヴィトンやグッチといった『ラグジュアリーブランド』へと、その主役は時代を映す鏡のように移り変わっています。
かつてのモータースポーツのスポンサーシップは、車体にロゴを掲出し、一般大衆に向けて商品をアピールする「認知度向上のための広告塔」としての役割が主流でしたが、現在は様々な狙いで企業が資金を投じています。
AWSやOracle、Googleなどのメガテック企業は、「テクノロジーパートナー」として参入することで、毎秒膨大なデータを処理する過酷なレース環境において「自社の最先端テクノロジーが極限状態でも完璧に機能する」ことをアピールしています。
レース会場に設けられた高額な専用ラウンジには、経営層や富裕層が集まります。
決済大手や投資銀行、ラグジュアリーブランドが狙うのは、まさにこの空間です。
熱狂を共有しながら巨額のビジネスを動かす「究極の接待・社交の場」として活用しています。
モータースポーツは、轟音が響く勝負の場から、「最先端テクノロジー」と「洗練されたカルチャー」が交差する知的で刺激的な空間へと変革しました。
この特別な空間に魅せられ、自ら現地へ赴くオーディエンス。
彼らが持つ「本物の体験を求める熱量」や「上質なものへの高い感度」は、自動車というジャンルの枠を超え、多種多様な業界のマーケティングにおいて非常に魅力的なターゲットとなります。
では、具体的にどのようなアプローチが有効なのでしょうか。
後編では、商材別の実践的な活用シナリオをご紹介します。
後編の記事はこちら
浅野 裕子
ぴあに入社してから、チケット情報の登録や提携コンビニの渉外担当、ぴあポイントサービスの立ち上げ、ぴあプレミアム会員のエンゲージメント向上の各種企画の実施、ぴあ総研での市場・ユーザー調査等、幅広い業務を経験。現在は、セグメント開発や、ユーザー分析、レポートや広告メニューの開発、マーケットリサーチ等に取り組んでいる。音楽フェス、来日ライブに頻繁に参戦していたが、徐々に追いかける対象がアートに変化。全国各地のアートフェスを楽しみにしている。
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